呪いのLSD(強化ブッシュ、シートレール、LSD、強化クラッチ、軽量フライホイール、クロスミッション実装)
金の斧、銀の斧、鉄のLSD
でも紹介したが、以前ジムカーナで知り合ったA氏からアルトワークスに組込んでいた多数の部品を譲って頂いた。
そこで今回はそれらの部品実装の様子を記したい。
<リア強化ブッシュ>
リアサスペンションのトレーリングアームにはスズキスポーツの強化ブッシュをはめ込んである。これらをウチのアルトにも組み付けてみる。
左がウチのアルトについていたもの。右は強化品。
ゴムの鮮度が違いますがな。
30分ほどで組み付け完了。
後足の「フニャフニャ」感がなくなった気がする。
<シートレール>
シートレールも頂いた。ウチのアルトに現在ついているシートレールは自作品なので交換することにした。
そのままでは取り付けられなかったので、切った貼ったの末になんとか装着。
<フロント強化ブッシュ>
前足のIアームも強化ブッシュ品に交換。
実はスズキスポーツ強化スタビもあるんですが、自作強化スタビでも十分に性能が出ているのでしばらくはこれをつかいます。
<ロールバーの付け根>
軽自動車耐久レースに参加する都合、ロールケージを取り付けている。
5ドア・アルト専用のロールケージは販売されていないのだが、そこはそれ。トディ用を取り付けている。
軽自動車規格だからまぁなんとかつくんだけれども、それでも「辻褄合わせ」は必要となる。
その辻褄合わせが上の写真である。
ロールバーとフロアの間に木板を挟んでいる。ウチのドライバーはこの事実を知らせていない。世の中知らないほうがいいこともある鴨。
うそです。まじめに作り直します。
そこで今回は鉄で作り直すついでにフロアへの接触面積も増やせるようにします。
まずは3.2mmの鉄板にケガキます。
ケガいた鉄板をサンダーで切り出します。
必要な場所にボール盤で穴をあけます。3.2mmともなると穴あけも大変。
切削油をバシバシ注ぐと白いBMWが「油だらけになる」ということで、ガレージの外でやりました。
続いてフラットバーを切ります。
切り出した部材を溶接します。
最初は点付けしてその後にビートを引きます。
偽クロックスのサンダルで溶接してはイケません。穴から火の粉が入ってアッチッチです。直ぐに長靴へと履き替えました。
溶接したらシャーシブラックで塗装します。シャーシブラックは直ぐに乾燥するので便利ですね。
最後に取り付け。アルトは軽自動車なので鉄板がペラペラに薄いです。
ロールバーの付け根部分周囲面積が小さいと衝撃でフロアを突き抜いてしまうかもしれません。なんで、最近の競技車両はシャシーの剛性向上も兼ねてこのように鉄の箱で補うことがあります。JAFの競技車両規則にも規格が決められていますね。
<ミッションOH>
これまでの作業は軽作業の部類なので一人でできました。
が、ミッションのOH。すなわちLSDやクロスミッション、軽量フライホイール、強化クラッチの組み付けはワタクシも経験がありません。
このような重整備は経験者に教授していただければ何よりであるということで、部品提供者のA氏にご指導を頂きながら進めてみた。
これらの作業は二日間にわけて実施することにした。1日目はミッションを下し。2日めでA氏の監修のもとに組み付けを行なう。
まず1日目は初めてのミッション取り出しをするためにガレージにアルトを押し込んで最大限にリフトアップ。2本のリジットラックとタイヤでクルマを支えます。
この時はN氏もまだ余裕の表情ではありました。
写真中央付近にあるのが今回のターゲット。
5ドア(しかもキャブのシングルカム)のアルトにクロスミッション、LSD、軽量フライホイール、強化クラッチなどを組み付けたらきっと「おい、のび太のくせに生意気だ」とかいわれかねないですね。
ミッションとエンジンは多数のボルトで固定されているので、車両の下に潜り込まないといけません。ドライブシャフトを外して排気管もはずします。
排気管はO2センサーがどうしてもはずれないので、ナット類だけ外して排気管をぶら下げました。
ラジエターやバッテリーを外しておけばスンナリとミッションはしたに下りました。よく「ジャッキでエンジンを傾けてミッションを降ろす」とありますが、このアルトに関してはその必要はありませんでした。
ちなみにウチらはここまで5時間ほどかかりましたが、プロの整備士でもある浜坊氏は5時間で脱着をしてしまうそうです。
ミッションをおろして一息というところでしょうか。
スペアで購入しておいたセルボの5MTと見比べております。
二日目はA氏にガレージまでお越し頂いてご指導を頂きました。
まずは軽量フライホイールを組み付けてみます。
期待のミッション分解。
まずは5速ギヤからバラします。
A氏はギヤとギヤの間にマイナスドライバーを差し込んで周り止めにします。
実は別の方法もあるのですが、それはまた別の機会に。
ベアリングにはCリングがあるのでそれを外しておかないとミッションを割れませんので注意。
ミッションの左右を固定するボルトをすべて外します。
ヨークのトップケースをバラします。
ボトムのボルトを外せばシフトヨークがゴッソリと抜けます。
ミッションを割ってみました。普通はギヤが残るハズですが、なぜかすっぽり外れてしまいました。
残らなかったギヤをはすします。どうも、チェックボールが残っていたようです。
ギヤを外してLSDを取り付けようとすると、デフのベアリングが合わないのです。
ややや、これはいかに?? ノーマル品のベアリングと交換しようとしましたが、これもサイズが合わず交換が出来ません。
しかもウチのアルトのドライブシャフトはLSDに刺さらないのですよ。インボード側が合わなければどうにもなりません。
ということはLSDは装着できないということか?!?!
なんとここまで作業してきてこれはいかに? K6A(アルトワークス)のデフはF6Aの買い物アルトに流用できないということではないですか。
ヘナヘナと笑うことしかできないワタクシとN氏の隣で部品提供者のA氏は切歯扼腕である。
そこにA氏がポツリポツリと語り始めた。
「このデフ、行きつけのショップでクスコとして購入したのですよ。」
はぁ? だってこれスズキスポーツ製じゃないですか?
「ショップでクスコのデフとして組み付けてもらったのですが、どうもLSDとしての効きが悪いのでイニシャルトルクを調整するためにバラしたらなんとスズキスポーツのLSDが入っていたのですよ。」
それって詐欺じゃないですか?
「ショップに文句を言ってもそのときの伝票ある?と言われて持っているわけないじゃないですか。」
ふ〜む、随分とワケありなんですね。
ジムカーナで最大の武器であるLSDが装着できないのは残念きわまりない。が、合わないものは仕方がない。そこでクロスミッションを組み付けてみる事にした。
クロスといってもアルトワークスのミッションなだけなんです。しかし、呪いはミッションにも及んでいた。
なんとK6AとF6Aではミッションギアのシャフト径が違うんですよ。よくみるとクラッチのスプラインも全然ちがうんですよ。
しかるにミッションも使えないということではないですか。
流用失敗が2度も続いて嘆いていてもしかたないので、本来のミッションを組み付ける事にしました。
ワークス用はつきませんが、もともとのミッションは普通につきます。そりゃ、もとの場所に戻るだけですから。
ミッションが完成したらエンジン側のフライホイールとクラッチを組み付けます。
クラッチは芯だしツールを使うらしいということで、ツールカンパニーストレートで芯だしツールを購入しておきました。
軽量フライホイールと強化クラッチを組み付けておきます。
クラッチの芯だしをしてから気がつきました。ミッションのシャフトがK6AとF6Aで違うということはクラッチやフライホイールも違うんじゃないかと思っていたら・・
K6AとF6Aのフライホイールを比べてみると大きさが違うんですよ。リングギヤの歯数が違うんですね。これじゃワークス用は装着できませんな。
LSDもダメ。ミッションもダメ。そしてクラッチとフライホイールもNGとは。
おなじアルトでカタチもそっくりなミッションなのですが、形状が微妙に違う。そりゃエンジンの馬力も違うのだからそうなのかもしれませんが、これは知識として得ていなかった部分である。
曰くつきのLSDにはさらにストーリーが加わり呪ったかのように全てをひっくり返してくれました。
結局全てノーマルで組んでいく事になりました。
実はクラッチディスクが摩耗していてリベットまで削れているという「要交換」の現状品ですが、いまから注文しても入荷は3日後とかだから直ぐには組つけられません。しかたないので摩耗しているディスクで一先ず組んでみます。
ミッションをエンジンと合体させるのにかなり手こずりましたが、なんとか装着できました。
途中、ソケットレンチのコマが排気管にフロントパイプに呑込まれるという「おむすびころりん」なこともありましたが、排気管を回したり叩いたりしてコマを救出成功。19mmのコマが排気管の中にあったら排気抵抗になりますからね。
上記写真はミッションオイルを注入する様子です。
サクションガンでミッションオイルを吸い上げてミッションに注入します。
たかだか2リットルのオイルですが、サクションガンの吸い込み量が少なく、かなり時間がかかります。
午前九時から始めた作業も午後七時前にはなんとかエンジンがまわり、ミッションテストを行ないました。
外はもう真っ暗ですよ。かなりくたびれましたが、全てのシフトポジションが正常に動作するのを確認できるとちょっと感動しました。
<最後に>
ワークスパーツ流用のトランスファーチューニングは全て失敗となってしまいました。
今回得たものは
「ワークスとアルトは似て非なる」
「クラッチディスクが要交換」
「デフまでばらす方法」
というところでしょうか。
A氏がいなければわからないことも沢山ありました。
これはもうA氏のおかげという他にはありません。感謝感謝であります。
二日間の作業で目的は達成できませんでしたが、とてもよい経験を得たかと思います。苦労と費用は授業料だと思えば経験として役に立つ筈です。
とにかく、近いうちにクラッチを交換しないとマズいので、10月末のジムカーナが終わったらまた分解交換ですな。
今回は部品提供者のA氏、長年一緒に活動してきたN氏、市川スズキの鈴木さん、家人まで大変お世話になりました。
多くの人々の協力があってこそ作業は無事に終えられたし、こういうこともできたのかと思います。
5ドアのアルトに高級な部品を組み付け過ぎてもそのうちに「かっぱわれる」んじゃないのか?とN氏と冗談を言い合っていました。
曰くつき呪いのLSD。さて、どうするかな。。
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